高齢者の方に必要な介護食には、どのような種類があるのでしょうか?この記事では、介護食の種類や調理の仕方などをご紹介しています。
Contents
介護食の種類|分類
介護食(介護食の料理形態)は一般的に、常食(じょうしょく)を含む6種類に分類されています。※常食とは普通の人が食べる料理のこと
≪介護食の一般的な分類≫
- 常食
- 一口大食
- 刻み食
- 軟菜食
- ソフト食
- ミキサー食
常食
出典:http://www.lifecaredesign.co.jp/quality/care/
常食(じょうしょく)とは『健康な人が食べる料理』のこと。
介護施設には、刻み食・ソフト食などの介護食が必要ない方もたくさんおられます。介護食が必要ない方は常食を食べられます。
私が働いていた介護施設(特別養護老人ホームや有料老人ホームなど)では、常食を食べられる入居者の割合は有料老人ホームで45%位、特別養護老人ホームで80%位でした。
特別養護老人ホーム(特養)は要介護度が大きい方が多く入居されているので、特別養護老人ホームでは、刻み食・軟菜食・ソフト食などの介護食を食べる方が多かったです。
有料老人ホームには要介護度が少ない入居者の方が多いので、常食を食べられる方の割合が多い傾向があります。
上のご紹介している画像の常食は、ライフケアデザインさんの常食になります。
ライフケアデザインさんは1999年に設立された会社ですが、介護施設を解説されたのは2016年と最近のこと。ライフケアデザインさんはソニ―のグループ企業です。いま管理人tsubameが最も注目している介護施設の一つです。
一口大食
出典:http://sunlife-mai.co.jp/seikatsu/
一口大食とは『常食を食べやすい大きさに切った料理』のこと。一口大は、口を大きく開けられない方や、咀嚼力が低下した方に合わせた介護食です。
上の画像の一口大は、新潟市にある介護付有料老人ホーム・サンライフ舞さんの一口大食です。とてもおいしそうですね。
食器はメラミン食器でしょうか。メラミンとは耐久性のあるプラスチックの一種類です。メラミン食器は丈夫なので、医療・介護用や子供用として広く使われる食器です。
お盆は、すべり止めがついたお盆なのかなと思います。介護施設では、安全対策のためにお盆にすべり止めがついているのが一般的です。
メラミン食器など、介護食器(自助食器)を詳しく知りたい方は介護食器の選び方・使い方|おすすめの自助食器・コップ・お皿とはを参考にしてください。
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刻み食|種類・調理の仕方
出典:http://www.nanroukai.or.jp/departments/nutrition/event/
刻み食とは『一口大食よりも小さく刻んだ介護食』のこと。
≪きざみ食の種類≫
- あらきざみ食
- きざみ食
- 細きざみ食
- 極きざみ食
- など…
刻み食は刻む大きさによって呼び名が変わります。例えば、
- 少し大きめは荒刻み食
- 普通の大きさは刻み食
- みじん切りくらいの大きさは細刻み食
- 一番細かいのは極刻み食
などと呼ばれます。ただ、「刻み食の呼び方」や「刻みの大きさ」は各介護施設によって異なっており、統一されていないのが現状です。
なので、刻み食の大きさや名称を詳しく知りたいときは、いろいろな介護施設や給食会社のホームページで刻み食の参考画像を調べるのがおすすめです。
上の画像の刻み食は和歌山県にある紀和病院さんの刻み食。
<メニュー>
・さくら寿司(かに雑炊)
・ 鮭の西京焼き
・ 煮物(南瓜・茄子)
・ 土佐和え(ほうれん草・人参)
・ さくらババロア
刻み食を上手にきれいに作るのはとても手間がかかるのですが、こちらの刻み食はほんとに上手にできています。管理人tsubameは正直に言うと、刻み食はちょっと遠慮したい料理なのですが、こちらの刻み食は食欲が湧く刻み食だと思いました。きざみ食が苦手な理由は、きざみ食はできた料理を刻むため衛生的にあまり良くないと思うからです。
この刻み食で使われている食器もたぶんメラミン食器かなと思います。茶碗が黒いのに気が付かれた方もいると思います。黒い食器は白内障や目の良くない方に適している食器といわれています。介護施設で働いていると、このようなことにも気がつくようになります。
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きざみ食の調理の仕方|ミルサーの種類など
刻み食は、できた料理を「包丁とまな板」や「ミルサー」などを使って調理した料理です。
≪きざみ食の調理の仕方≫
- できた料理を「包丁とまな板」や「ミルサー」を使って刻む
- 刻み食を作る量によって、「包丁とまな板」「ミルサー」を使い分ける
- きざみ加減は刻み食を食べられる方の状態に合わせる
軟菜食
出典:http://www.chp.toyonaka.osaka.jp/section/nutritional_care/recipe/meat/010_2.html
軟菜食とは『主に野菜に熱を加えて柔らかくした料理』です。
かむ力が弱くなると、硬い料理が食べにくくなります。そのような方に、軟菜食を提供します。例えば、常食のメニューで生野菜のサラダがあったとします。
生野菜は繊維が強く硬いですので、高齢者の中には生野菜を食べることが困難な方もおられます。このようなときに、「生野菜に熱を加えて柔らかくしたもの=軟菜」を提供します。
ただ、レタスなど生野菜の中には熱を加えても柔らかくならない野菜もあります。レタスなどが常食で提供されるときは、軟菜食ではレタスの代わりに熱を加えたダイコンやキュウリなどを提供します。
軟菜食に向く野菜を知りたいときは介護食・嚥下食におすすめの野菜|キャベツ・ピーマン・ブロッコリー|献立を参考にしてください。
軟菜食には野菜の料理以外にも、肉や魚料理もあります。軟菜食の肉料理では主にミンチを使い、魚料理の場合は身の柔らかい魚を使った煮物や蒸し料理を提供します。
ご紹介した画像の軟菜食は、大阪府にある市立豊中病院さんの軟菜食。軟菜食は作るのが難しいのですが、難しい軟菜食をとてもおいしそうに作られる市立豊中病院さんは、すごい調理技術を持っていると思いました。
軟菜食と刻み食
食べ物は「噛むことにより唾液でまとまり飲み込みやすくなる性質」があります。反対にいうと、あまり噛まないと、まとまりのない食べ物を飲みこむことになります。
刻み食は物をかむ力が弱くなった方向けの料理形態ですので、あまり噛まずに飲み込むことができます。しかし、刻み食を噛まないと、刻み食を唾液でまとめることができません。そうすると、
- まとまっていない刻み食を飲みこむとき、刻み食の一部が気管に入る=誤嚥(ごえん)しやすくなる
ことが分かってきました。
誤嚥(ごえん)とは『食べ物などを飲みこむとき気管や肺にものが入ること』をいいます。誤嚥をすると高齢者の誤嚥性肺炎の原因になりますが、高齢者高齢者の肺炎の一番の要因は誤嚥による誤嚥性肺炎といわれています。
このような事情から、「きざみ食は誤嚥につながるのではないか」ということで、きざみ食の代わりに軟菜食を提供する介護施設も出てきています。
↓誤嚥についての記事はこちら
軟菜食と凍結含浸法
最近では、料理を柔らかくする技術の発達により、
- 料理の形を残したまま柔らかくすること
ができるようになりました。例えば、凍結含浸法という調理方法があります。
凍結含浸法は「食材を凍結させることで食材を柔らかくする技術(調理の仕方)」のことで、いろいろな企業や老人ホームで凍結含浸法が利用されています。
↓凍結含浸法の詳細はこちら
ソフト食
出典:http://www.keiaien.co.jp/odawara/odawarafood/
ソフト食とは「咀嚼力や嚥下力がかなり衰えた方のための食事形態で、食材をペースト状にしたあとに再成形した調理形態」のこと。
ソフト食の食感は、ゼリーのような食感ではなく、クリームチーズケーキのような食感になります。
≪ソフト食の良さ≫
- 食材が一度ペーストされているで、消化が良く栄養を確実に摂取することができる
- ソフト食は見た目がきれいなので、食べる人の食欲を増進させる働きもある
ソフト食の調理の仕方について、ソフト食は柔らかく崩れやすいですので、きれいに盛り付けるのがちょっと難しいです。
ご紹介した画像のソフト食は、見た目がとてもよくおいしそうです。こちらのソフト食は神奈川県小田原市にある慶愛園さんのソフト食です。慶愛園さんは料理にとても力を入れられているようで、11食種の療養食献立に対応していました。11種類も療養食献立がある介護施設は多くはないと思いますので、すごいと思います。
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ミキサー食
出典:http://www.keiaien.co.jp/odawara/odawarafood/
ミキサー食とは『食材をミキサーにかかて水分調節された再形成されていない料理形態』のこと。
ミキサー食は、水のようにサラサラではなく、お好みソースのような粘度があります。少し粘度(トロミ)がついていた方が飲み込みやすいので、とろみ調整剤などで粘土を調整します。
↓とろみ調整剤などの詳細はこちら
ペースト食作り方※とろみ剤や「まとめるこ」など使用|簡単介護食
ミキサー食は「ソフト食でも飲み込むことが困難な方に作られた介護食」ともいえます。ミキサー食は、嚥下力や咀嚼力がかなり衰えた方でも飲み込みやすく食べやすい介護食といえます。※嚥下力(えんげりょく)、咀嚼力(そしゃくりょく)
ご紹介した画像のミキサー食も、ソフト食でご紹介した慶愛園さんのミキサー食。ミキサー食の盛り付けはとても難しいのですが、とても上手に盛り付けをされておられます。ミキサー食は盛りつけが難しいのですが、きれいに盛り付けされてますね。
ミキサー食をきれいに盛り付けるには経験が必要ですので、慶愛園さんは、介護食にとても経験がある介護施設であることが分かります。
ところで、介護食にはミキサー食に似ている料理形態として、ペースト食やムース食などがありますね。ミキサー食とペースト食やムース食との違いが分からない方も多いと思います。
ミキサー食・ペースト食・ムース食などの違いが分からないときはペースト食とは※ミキサー食・ソフト食・ムース食・ゼリー食との違いを参考にしてください。
ミキサー食などペースト食を家庭で作るのは大変です。最近は、キューピーなどからペースト食も市販されています。ミキサー食やソフト食などがペースト食が必要になったときは、まずは、キューピーなどの市販品からお試ししてみるのがおすすめです。
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介護食の必要性
これまでにお話ししたように、
- 嚥下機能や咀嚼機能が弱くなった方は、自分の身体の状態にあった料理(介護食)を食べる必要
があります。その理由には、主に3つの理由があります。
≪身体の状態にあった介護食を食べる必要性≫
- 誤嚥(ごえん)を防ぐため
- 窒息(ちっそく)を防ぐため
- 消化不良を防ぐため
介護食の必要性① 誤嚥を防ぐため
介護食は『誤嚥を防ぐため』に必要な料理形態のこと。
『誤嚥とは食べ物や飲み物が気管に入ってしまうこと』ですが、嚥下力(えんげりょく)が低下すると物をうまく飲み込めず誤嚥を起こしやすくなります。
※嚥下力(えんげりょく)とは物を飲みこむ力のこと
※誤飲(ごいん)とは食べ物でないものを飲みこむこと
誤嚥をして肺に物が入ると、誤嚥性肺炎になる危険性が高くなります。高齢者の死亡要因の1位は肺炎ですが、肺炎のほとんどの要因が誤嚥による誤嚥性肺炎よるものといわれてます。
このように、誤嚥は高齢者にとって命に係わることなので、誤嚥を防ぐために誤嚥をしにくい介護食が必要になるのですね。
↓誤嚥につていの記事はこちら
誤嚥性肺炎|自宅でできる3つの誤嚥対策とは|口腔ケア・食事前介護食
介護食の必要性② 窒息を防ぐため
高齢になると、嚥下力の低下とともに咀嚼力(そしゃく力)の低下もあげられます。咀嚼力が低下すると、食べ物をあまり噛まずに丸のみすることも出てきます。嚥下力の低下した高齢者が食べ物を丸呑みすると、嚥下力が弱くなっているので窒息する危険がとても高くなります。
このように、身体の機能に合わない料理を食べるのは、高齢者にとって危険なことがあります。そのため、咀嚼力(そしゃくりょく)が低下した高齢者でも食べやすいように、柔らかい介護食が発達してきました。
↓やわらか食・ペースト食の宅配はこちら
嚥下困難食※宅配サービスの探し方|やわらか食・ペースト食・介護食を自宅配達
介護食の必要性③ 消化不良を防ぐため
「高齢になり咀嚼力が低下するとあまり食べ物を噛まずに飲み込むようになる」ことをお話ししました。あまり噛まれていない食べ物は消化されにくく栄養の吸収も悪くなります。この状態が続くと、高齢者の低栄養の原因にもなります。
※高齢者の低栄養とは『エネルギーの摂取量や、たんぱく質が足りない状態』のこと。
以前、100歳以上の方の元気の秘密を調べたことがあります。すると、100歳以上の方の元気の秘密には、『よく噛んで食べる』という共通点があることが分かりました。昔から『よく噛んで食べることは大事』といわれてますが、本当のことなのだなと思いました。
100歳以上の方の元気の秘密が知りたい方は元気の秘密※100歳の健康法|食事・食べ物|100歳まで生きるをご覧になってみてください。
近年、高齢者の低栄養が取り上げられるようになりました。高齢者が低栄養になる原因は、
- 高齢になり食べる量が減ったこと
- 咀嚼力の低下により食べ物を消化の悪い状態で飲み込むこと
などが考えられています。低栄養になると、健康を維持しにくくなってきますので、高齢者はとくに低栄養に気をつける必要があります。低栄養にならないためには、消化のいい料理を食べることも大事です。
↓関連記事
高齢者の低栄養の3つの原因とは|食べる量・噛む力・偏った食事|健康で長生き
介護食のまとめ
「きざみ食」や「軟菜食」など、「介護食の種類」や「調理の仕方」をご紹介してきました。
≪主な介護食の種類≫
- 常食
- 一口大食
- きざみ食
- 軟菜食
- ソフト食
- ミキサー食
介護食には、ご紹介した介護食のほかにも、「ゼリー食」や「ムース食」そして凍結含浸法と呼ばれる介護食などがあります。また、おかゆ・豆腐・ヨーグルトなども、介護食として代用できます。
介護食の種類がたくさんある理由
介護食の種類がたくさんある理由は、
- 嚥下力や咀嚼力に合わせた介護食が必要であるから
です。歳をとり高齢になると飲み込む力、噛む力が弱くなってきます。飲み込む力・噛む力が弱くなったとき、その方の身体の状態に合わせた介護食を提することが大事です。介護食が必要になったときは、介護食を食べる方の身体の状態にあった介護食を提供していきましょう。
ただ、身体に合わせた介護食、とくにミキサー食やソフト食を作るのは、時間的な問題や技術的な問題で難しいこともあると思います。そのようなときは、介護食の市販品を利用しながら、無理のない介護食作り・調理の仕方を行うのがおすすめです。
何ごとも無理をすると続かなくなりますね。ですので、無理をせず、自分ができるところから介護食作りを行っていきましょう。